きょうのコラム『時鐘』

2017/08/18 00:18

 ジャパンテントが始(はじ)まったころ、本社(ほんしゃ)編集局(へんしゅうきょく)は初(はじ)めて外国人(がいこくじん)研修(けんしゅう)記者(きしゃ)を受(う)け入(い)れた。第(だい)1号(ごう)は英国(えいこく)の若者(わかもの)で、留学生(りゅうがくせい)の取材(しゅざい)に向(む)かった

日本人(にほんじん)から見(み)ると独(どく)・仏(ふつ)・英国人の違(ちが)いが分(わ)かりにくい。「君(きみ)は留学生の国(くに)は分かるのか?」と聞(き)いたところ「当然(とうぜん)ですよー」との答(こた)え。肌(はだ)の色(いろ)や言葉(ことば)ではなく「個々(ここ)の雰囲気(ふんいき)で分かる」と言(い)うのだった。これが国際(こくさい)感覚(かんかく)かと、感心(かんしん)した記憶(きおく)がある

99年(ねん)のピュリツァー賞(しょう)を受賞(じゅしょう)した米国(べいこく)の歴史(れきし)学者(がくしゃ)ジョン・ダワー氏(し)は昭和(しょうわ)30年代(ねんだい)に金沢でホームステイをしていた。受賞作(さく)の中(なか)で「われわれ日本人」という人々(ひとびと)ではなくて「個としての日本人」の声(こえ)に耳(みみ)を傾(かたむ)けたと書(か)いている

国際交流(こうりゅう)は「国籍(こくせき)」の中に「個」をみつけることかもしれない。その逆(ぎゃく)で「個性(こせい)」の中に「国」を発見(はっけん)することもある。留学生に「ふるさと愛(あい)」を聞くのも国の違いを指摘(してき)するのではなく、違いを認(みと)め合(あ)うためだ。それが「世界(せかい)の中の自分(じぶん)」を発見する知恵(ちえ)になる

世界と地域(ちいき)、個人と国家(こっか)の関係(かんけい)を教(おし)えてくれたあの若者(わかもの)たちが間(ま)もなく、地球(ちきゅう)のどこかで還暦(かんれき)を迎(むか)える。感慨(かんがい)深(ぶか)い30年である。