きょうのコラム『時鐘』

2018/06/23 01:20

 阪神(はんしん)や東日本(ひがしにほん)の震災直後(しんさいちょくご)、文化財被害(ぶんかざいひがい)の報道(ほうどう)は少(すく)なかった。熊本地震(くまもとじしん)でも、城(しろ)の崩壊(ほうかい)報道は復興事業(ふっこうじぎょう)の後(あと)だった

犠牲者(ぎせいしゃ)があまりにも多(おお)かったせいもある。災害(さいがい)直後の報道は人命(じんめい)が最優先(さいゆうせん)、文化財情報(じょうほう)はその後である。しかし、今回(こんかい)の大阪北部(おおさかほくぶ)地震では発生当日(はっせいとうじつ)から寺社(じしゃ)の被害が報告(ほうこく)された。京都(きょうと)・奈良(なら)も相当(そうとう)に揺(ゆ)れたからである

震源地付近(しんげんちふきん)は「国宝(こくほう)・重文(じゅうぶん)」の密集地(みっしゅうち)だった。大阪府内(ふない)での震度(しんど)6弱(じゃく)は初(はじ)めてだったが、京都市内(しない)や奈良周辺(しゅうへん)でも近年経験(きんねんけいけん)したことのない大(おお)きな揺れだった。文化財の被害の大きさは当然心配(とうぜんしんぱい)された。しかし、奈良の大仏殿(だいぶつでん)も京都御所(ごしょ)も無事(ぶじ)だった。数(かず)ある五重塔(ごじゅうのとう)も倒(たお)れなかった

伝統工法(でんとうこうほう)は意外(いがい)に強(つよ)いことが証明(しょうめい)された。弱(よわ)かったのは昭和(しょうわ)のコンクリート工法だった。お粗末(そまつ)な現代(げんだい)工法と無責任(むせきにん)な点検(てんけん)のために人(ひと)の命(いのち)が奪(うば)われたことが残念(ざんねん)なのだが、文化財と人命を守(まも)る精神(せいしん)は同(おな)じだと思(おも)う

文化財は何百年(なんびゃくねん)もの風雪(ふうせつ)に耐(た)えて国(くに)の宝(たから)になった。すぐ造(つく)れるものはすぐに壊(こわ)れる。時間(じかん)をかけて造り壊れにくく点検し続(つづ)けたのが文化財である。伝統建造物(けんぞうぶつ)の生命力(せいめいりょく)に学(まな)びたい。