きょうのコラム『時鐘』

2017/06/25 00:49

 硬(かた)い記事(きじ)の多(おお)い経済面(けいざいめん)に柔(やわ)らかいニュースがあった。「豆腐屋(とうふや)さん苦境(くきょう)」。経営者(けいえいしゃ)の高齢化(こうれいか)に加(くわ)えて安売(やすう)りが追(お)い打(う)ちを掛(か)けて、廃業(はいぎょう)が続(つづ)くというのである

「いい街(まち)」の条件(じょうけん)に「いい豆腐屋」があると言(い)ったのは作家(さっか)の嵐山光三郎(あらしやまこうざぶろう)さんだった。鍋(なべ)を片手(かたて)に豆腐を買(か)いに行(い)かされた世代(せだい)にしか分(わ)からない感覚(かんかく)だろう。いまの季節(きせつ)なら「いい豆腐屋さん」からは涼(すず)しい風(かぜ)が吹(ふ)いてくる

で、豆腐屋さんが危機(きき)なら街(まち)も危機だ。家族経営(かぞくけいえい)の小(ちい)さな店(みせ)が生(い)きていける街は「健康(けんこう)」であるということなのだ。働(はたら)き者(もの)の父(とう)ちゃん、母(かあ)ちゃんに子(こ)どもも手伝(てつだ)いをする。そのイメージが大事(だいじ)なのである

首都圏(しゅとけん)や関西(かんさい)では豆腐屋と銭湯(せんとう)は北陸(ほくりく)の出身者(しゅっしんしゃ)が多(おお)いことで知(し)られる。忍耐強(にんたいづよ)く働(はたら)き者(もの)が多(おお)いとのイメージだ。その銭湯も急激(きゅうげき)に数(かず)を減(へ)らしている。これでは街のピンチばかりか北陸のイメージの危機ではないか

弱肉強食(じゃくにくきょうしょく)が経済(けいざい)の掟(おきて)とはいえ、それがすべてではない。冷(ひ)や奴(やっこ)に舌鼓(したつづみ)をうち、湯(ゆ)でさっぱりと汗(あせ)を流(なが)す暮(く)らしの余裕(よゆう)を考(かんが)えてほしい。同情(どうじょう)するなら買(か)ってほしい。そんな声(こえ)も聞(き)こえてくる。