2006年3月5日更新
頭が良くなる噂の名水 富山・石倉町の延命地蔵水 市民らに人気

 富山市街地のいたち川べりを歩いていると、ペットボトルやポリタンクを両手に抱えた 人の集まる井戸があった。三月とはいえ、まだ冷たい水をくみ取り、中には隣のお地蔵さ んに熱心に手を合わせていく人もいる。「いったい何の御利益があるのだろうか」と気に なって声をかけると、返ってくる答えはさまざま。いわく、「目の病気が治る」「子宝に 恵まれる」「学業に御利益が」。話を聞くうち、その噂(うわさ)の秘密を確かめたくな った。

 石倉町の延命地蔵尊横でわく水は富山名水百選にも指定され、万病に効く「延命水」と して知られている。立山山麓(ろく)の雪解け水が約二十年かけて下り、地下約四十メー トルからわき出す。水をくむ人の中には、飲料水だけでなく、料理や風呂に使う愛好者も いるという。「この水でなければ」と訪れる酒蔵や菓子店主もいる。地蔵は約百五十年前 に川底から現れ、悪疫(あくえき)を治めたと語り伝えられている。奉賛会が毎日、花を 供え、周辺を掃き清めるなど信仰を集める。

 街づくり機関「まちづくりとやま」副社長の松井幹夫さんによると、地蔵尊の水は「頭 の良くなる水」として評判らしい。石倉町周辺には東大合格者が多いという。子供のころ から井戸の水を飲み続けた御利益があったのか。富山育英予備校でも、三年前から大みそ かに、合格祈願に訪れている。ノーベル化学賞を受賞した田中耕一さんの生家も近いとあ り、松井さんは「田中さんもこの水を飲んでいたかも」と話す。

 地蔵尊の水を心のよりどころにして生きている人も多い。富山市笹津(旧大沢野)の水 口ミズイさん(73)もその一人だ。約五十年間にわたり、十五キロ離れた自宅からほぼ 毎日地蔵尊を訪れ、さい銭を欠かさない。子宝に恵まれない娘のため、祈願を続け、その かいあってか授かった孫の勝博さんは、今、東大に通い勉学に励んでいる。三歳のころか ら高校まで、ミズイさんに連れられ、地蔵尊に通い続けたという。

 ミズイさんは「お地蔵さんに授かり、育て、見守られた子だと思う。命の続く限り、感 謝したい」と話す。一心に祈る水口さんと肩を並べ、お地蔵さんの柔和な顔を見ているう ち、多くの御利益がささやかれる水の魅力が分かった気がした。

(岡部道典)




富山新聞社
〒930-8520 富山県富山市大手町5番1号 Tel.076-491-8111