今日の社説

2017/03/23 01:22

モンキードッグ 害獣対策の有力な武器に

 人間の生活に危害を加える野生動物を追い払うために特別に訓練された犬を害獣駆除犬と呼ぶ。「モンキードッグ」「ベアドッグ」などがそうである。北陸でも試験的に導入が始まり、農作物被害を減らす効果が期待される。

 金沢市が今年度からモンキードッグ購入費の半額補助を試験的に導入したのに続き、白山市でも新年度から助成制度を導入する。富山市では富山県立中央農業高校の生徒がモンキードッグを訓練し、中山間地にあるラッキョウ畑のパトロールを始めたところ、昨年は被害が大幅に減ったという。

 鳥獣による農作物被害は全国で年間約200億円に達している。昨年、クマに襲われ、けがをした人は105人で、うち4人が死亡した。イノシシが人を襲う事故も多発している。

 中山間地では、地域人口の減少や耕作放棄地の増加で人間の生活圏と野生動物の生息圏の境が曖昧になっている。電気柵やネットだけでは被害を食い止められず、人間の生活圏から追い払う次の一手が必要だ。モンキードッグはサル以外に、イノシシ、シカにも有効であり、クマを人里に寄せ付けない効果も期待できる。害獣対策の有力な武器になるのではないか。

 警察犬訓練所などで約4カ月間、飼い主から犬を預かり、▽人に危害を加えない▽サル、シカ、イノシシなどの野生獣類を見たら追い払う▽追い払った後や人間に呼ばれたときは速やかに戻ることを徹底して教える。続いて2カ月、実地訓練が行われ、地形に慣れ、追い払いの目安となる境界線を覚えさせるという。富山県に近い長野県大町市では10年前からモンキードッグの訓練をスタートさせ、最近では28頭のモンキードッグが活躍している。

 地域住民の飼い犬を利用するのが一般的で、中型犬以上であれば、犬種を問わない。飼い主などとともにパトロールし、サルなどを見つけると、リードを外し、山へ追っ払う。だが、1頭のモンキードッグが活動できる範囲は限られている。有効に機能させるには大町市のように、まとまった数が必要であり、実験結果を見て本格導入を目指したい。

首相の欧州歴訪 保護主義の防波堤づくり

 欧州4カ国を訪問した安倍晋三首相は、メルケル・ドイツ首相らと相次いで首脳会談を行い、自由貿易の推進で一致した。5月にイタリアで開かれる先進7カ国(G7)首脳会議は、保護主義の広がりを食い止める「防波堤」となり、世界経済のけん引役を引き続き担えるかどうかを試されることになる。安倍首相の今回の欧州歴訪は、トランプ米大統領の参加で協調に不安があるG7で主導的な役割を果たす決意を示すものと言え、そのための地ならしの意味を持つ。

 安倍首相は、欧州連合(EU)のトゥスク大統領、ユンケル欧州委員長を含む首脳との会談で、保護主義や内向き志向の台頭に懸念を示し、「自由で開かれたルールに基づく経済」の重要性を強調した。それはトランプ米政権に対するメッセージでもある。

 先にドイツで開催された20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の共同声明は、米国の強い反対で「反保護主義」の文言が盛り込まれなかった。リーマンショックを契機とした世界的な経済危機の中で存在意義を増したG20は、保護主義的な政策を求める圧力に対抗していくことを大義としてきた。反保護主義というG20のうたい文句が、「米国第一」を掲げるトランプ政権の圧力で共同声明から消えたことは、これまで世界経済繁栄の礎とされてきた自由貿易体制を揺るがす事態といっても過言ではなかろう。

 安倍首相はイタリアのジェンティローニ首相との会談で、首脳会議の新旧議長として、G7の価値と結束を世界に示すことを申し合わせた。G7メンバーではメルケル首相に次ぐ古参となった安倍首相は、いち早くトランプ大統領と会談しており、G7のまとめ役としての責任を負うことになる。

 欧州首脳との会談では、海洋安全保障での連携でも一致した。フランスのオランド大統領とは仏海軍練習艦隊の日本訪問で合意し、日仏米英4カ国による海上合同演習の実施を表明したことは、欧州歴訪の重要な成果である。海洋秩序維持でG7の意思を統一することも安倍首相の役割である。