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きょうの社説 2012年5月17日
◎北陸への節電要請 エネルギー政策が見えない
政府は夏の電力不足に対応するため、電力に余裕がある地域にも節電を求める需給対策
を示した。北陸電力管内に対しては、電力不足が深刻な関西に送電するため、猛暑であった2010年夏の最大需要に対して5%の節電を要請する。強制力は伴わないが、対策が正式に決まれば北電は政府の方針に従って利用者に協力を求めることになるのだろう。節電の要請が経済活動や県民の生活に及ぼす影響は小さくない。政府は数値目標を掲げ て節電を促す以上、その影響を抑える措置も講じなければならない。広範囲に協力を求める異例の事態を深刻に受け止めて、節電の必要性と今後のエネルギー政策を明確に示す必要がある。 電力供給に余力が残っている北陸で節電を迫られる企業が困惑するのは無理もない。納 期や品質に厳しい管理を要求される製造業では、電力の使用に不安を抱えること自体が足かせになる。省電力や自家発電の設備に投資できない零細企業や個人事業者も多い。節電期間が長引けば事業に影響が出てくる恐れもある。政府と北電には、そうした不安を解消する取り組みが求められる。 北電は志賀原発が動いていないため、電力の7割以上を火力に頼っている。古い火力発 電所もあり、電力需要が増える夏に故障で停止すると、供給力が不足しかねない。電力使用制限令の発動が検討される関西向けの送電量を増やすのはやむを得ないとしても、余裕のない中での電力融通にはトラブルの危険を伴う。政府と電力会社は発電や送電の設備に故障が発生した場合の対応も周到に検討しなければならない。 もともと、北陸は長年にわたって関西に電力を送ってきた。関西電力の原発がある福井 県はもちろん、富山県では水量が豊富な黒部川と庄川を関電が利用している。石川県にある志賀原発も関電への融通を織り込んでつくられた。 今後、北陸新幹線の延伸をめぐって関係が深まる関西には、この機会に電力供給で果た してきた北陸の役割を理解してもらいたい。国策として原発を推進してきた政府も電力供給地の貢献を消費地に説明する責任がある。
◎福山ホテル火災 是正措置の強化検討を
7人が死亡した広島県福山市のホテル火災は、既存不適格といわれる建築物などの防火
上の問題点をあらためて浮き彫りにした。ホテル側の防火管理責任を厳しく追及するともに、消防当局による違反是正措置の強化を検討する必要がある。今回の火災を受けて、宿泊施設の特別査察を行う自治体が全国で相次いでおり、石川県 内のホテルや旅館では検査・報告義務が徹底されず、自治体の改善指導も実効性に乏しい実態が明らかになっている。防火体制の不備、違法状態を是正する取り組みの強化は各自治体の共通課題である。 福山市のホテル火災で浮かび上がった問題点の一つは、ホテルが建築基準法違反である ことを、福山市が25年以上も見過ごすミスを犯していたことだ。また、ホテル側は点検・報告義務を長年怠っており、市側も報告を求める通知をしていなかったという。 建築基準法の改正規定は、原則として遡って適用されないため、改正前の基準の建築物 は既存不適格といわれ、違法建築とはみなされない。しかし、その後に構造を変える増改築を行った場合は新基準に合わせることが求められ、新たに確認申請を行う必要も出てくる。福山市のホテルはこのケースに該当したが、同市は既存不適格の建築物と判断し、強制力のない改善指導に終始してきた。 一方、福山地区消防組合による消防法の査察は2003年が最後で、それ以後、消防組 合の内規で定めた「2年に1度の査察」は、人員不足や査察対象の増加を理由に実施されていないという。 建築基準法と違って消防法は遡及適用され、ホテルなど多くの人が利用する特定防火対 象物の建物は、法改正前の建築でも現行基準に合わせることが義務付けられている。福山市は査察と違法判断を的確に行い、是正指導を強めるべきだったと反省しているが、問題のホテルに対しては警告、是正命令から使用停止命令という強い措置に出ることも考えられたのではないか。他の自治体では、使用停止命令の発動を準備しただけで是正効果が表れた例もある。
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