今日の社説

2016/07/25 02:14

増えるクルーズ船 街の魅力に見合う金沢港に

 金沢港に入るクルーズ船の増加が著しい。今年はこれまでで最も多い30回の寄港が予定されている。来年はイタリアの1社だけで32回の寄港が決まり、今年の最多記録を更新する見通しになっている。

 金沢港でクルーズ船の寄港が増えるのは港から観光地が近いからだろう。船を下りてから移動に多くの時間をかけなくても、城下町の歴史や文化、食を堪能できる。北陸新幹線の金沢駅に近く、道路事情の改善が進んだことで周辺の観光地も訪ねやすくなった。

 富山県は金沢港に入るクルーズ船の乗客にとっても魅力的な訪問先に見えるのではないだろうか。金沢港から人を呼び込む方策を考えることは、地域経済にとってマイナスにはならないだろう。世界遺産の五箇山合掌造り集落や立山黒部アルペンルートなどの観光資源を生かして、クルーズ船観光の活力を取り込みたい。

 金沢港の課題は背後に広がる街の魅力に比べて、港の施設や景観が見劣りすることである。城下町の風情を期待してきたクルーズ船の乗客は港に下り立ったときに、どのような印象を抱くのだろうか。街の魅力や風格に見合うように港の整備を加速する時期に来ているのではないか。

 政府が近く策定する経済対策では訪日外国人を増やすための具体策として、クルーズ船が入る港の整備が盛り込まれる。この機会を生かして金沢港の機能を強化する必要がある。

 金沢港では大型クルーズ船は客船用の無量寺埠頭(ふとう)に接岸できず、貨物船用の埠頭を利用している。今年度から始まる無量寺埠頭の再整備を急がなければならない。

 乗客を受け入れる施設の整備も課題である。旅客ターミナルの機能を担う金沢みなと会館は手狭で老朽化が進んでおり、役割を十分に果たしているとは言い難い。夜間が暗い現状も改善を要する。海の玄関口として見劣りのする状態がこの先も続くのは、好ましくないだろう。

 金沢港は2020年に開港から50年を迎える。東京五輪・パラリンピックの開催時期と重なる節目に向けて、施設を拡充し、景観を整える必要性が高まっている。

国連事務総長選 現体制の評価も踏まえて

 国連安全保障理事会で、新しい事務総長の選考作業が本格的に始まった。今年末で任期満了となる潘基文事務総長の後任候補として現在、12人が名乗りを上げている。「ストローポール」と呼ばれる安保理の非公式投票を繰り返して候補者が絞り込まれるが、戦後の国際秩序が大きく揺れ動くなか、「国連の理想の象徴」というにふさわしい有能な事務総長を選んでもらいたい。

 次期事務総長の選考に当たっては、2期10年にわたって国連組織を率いた潘氏に対する国際的な評価を踏まえる必要もあろう。事務総長は国連行政組織の最高責任者であり、国際平和を脅かす重大な問題について、安保理に注意を促す権限を持ち、独自に調停に乗り出すこともできる。歴代事務総長には、大国の圧力に左右されぬ独立性と中立性を維持しながら、国際和平の実現に指導力を発揮した人が少なくない。

 これに対して、潘氏に対する国連外交筋などの評価は概して芳しくなく、存在感も業績も乏しいと言わざるを得ない。シリアのアサド政権による大量虐殺では、積極的に役割を果たそうとしなかったため、中東関係国の失望を買い、国連内部では「縁故主義」の人事を批判されるなど、マイナス評価が多い。中国が昨年実施した抗日戦争勝利70年記念行事に参加するなど、事務総長として中立性に反する言動も目についた。

 事務総長としての力量不足を指摘される潘氏が2期続けられたのは、安保理常任理事国がうとましく思うほどの指導力を発揮しなかったことが一因といった皮肉な見方もなされる。後任事務総長は、国連の理想の体現者として広く尊敬される人物であってほしい。

 事務総長ポストは国連が定める世界5地域の持ち回りが慣例で、安保理の「密室選挙」で選ばれることに批判も根強い。このため、今回の事務総長選では候補者に対する公聴会が初めて開かれた。事務総長を実質的に決めるのは5常任理事国であるが、従来より開かれた形にした選考方法の改善がより良い事務総長の誕生につながるよう望みたい。